エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「ごめん、ごめん。言葉不足で。俺が悪かったね」

 その声には、やはり笑いを堪えている。私は静かにかぶりを振った。

「こちらこそ気が利かなくてすみません。それで、あの……用件はなんでしょうか?」

 ゆっくりと顔を上げると、思ったよりも近くに倉木さんは立っていた。目が合うと、にっと口角を上げて意地悪そうな笑顔を浮かべられる。

「そりゃ、桜田さんに会いたくて」

「な、なに言ってるんですか!?」 

「いけない? 付き合ってるんだから、当然のことかと」

 さらっと紡がれる言葉に私の心拍数は一気に上昇する。これは本気で受け取ってはいけない、必死で言い聞かせながら、話題を変える意味も込めて、私は気になっていたことを口にした。

「あの、倉木さん。お仕事大変みたいですけど、大丈夫ですか?」

「どうしたの、急に」

「大一番を抱えているって話しているのを聞いてしまって」

 元々忙しい人なのに、そんな大事な仕事を抱えながら、私に時間を割いてもらうのもなんだか申し訳ない。すると倉木さんはあっけらかんと返してきた。

「あー、大丈夫、大丈夫。だってあれって桜田さんのことだし」

「私?」

 まさかの返答に私は目をぱちくりとさせる。
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