エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「この制服着てるからって、イタリアンやフレンチしか行かないと思ったら大間違いですよ」

 さすがにスカーフははずしていこうと思うけれど。制服云々の前に、「受付嬢」っていう肩書きだけで、あれこれイメージを押し付けられることに、少しだけ辟易していた。そうしていると、ふと頭の上に温かい重みを感じる。

「そうだね。ごめん、ごめん」

 なだめるように、でもやっぱり笑いながら倉木さんが頭をよしよししてくれた。触れられたことに、腹を立てていたことなんて、あっさりとどこかに飛んで行ってしまう。

 倉木さんは、やっぱり女子の扱いが上手すぎると思う。それとも私が単純なだけなのか。こんな些細なことに動揺して、胸が苦しくなるなんて。

 倉木さんに連れて行ってもらったラーメン屋は、内装はシンプルだけれど、ライトの影響もあってか、どこかカフェみたいな雰囲気も醸し出していた。

 とりあえず今日は初めて来たから、一番シンプルなラーメンを注文してみた。透き通るようなスープに、ほろほろのチャーシュー、煮玉子、海苔、ネギ、メンマとお決まりの具材が、どれもいい塩梅でラーメンを引き立たせている。

 それにしても、ここのラーメン屋は変わり種のメニューも多かった。トマトクリームチーズラーメンというのものや、緑黄色野菜をベースにしたグリーンラーメン、イカ墨をスープに入れたブラックラーメンなどなど。

 倉木さんと、どんな味なんだろうか、と盛り上がってラーメン屋での話題に困ることはなかった。

「じゃぁ、次来たら、俺はこのブラックラーメンに挑戦してみるよ」

 倉木さんが写真付きのメニューを指差しながら宣言するので私は笑った。
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