エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 この冬にお呼ばれしている結婚式用にと買っておいたもので、袖口と裾にフリルがあしらわれ、シンプルだけど上品なAラインのものだ。まさかデートでおろすことになるなんて思いもよらなかったけれど。

 それに合わせた靴やバッグ、小物なども持ってきたので、今日は大荷物での出社だ。メイクを直して、肩下で揺れている栗色の髪をいつもよりも大胆にまとめ上げる。

 普段は下ろしているか、ハーフアップにしていることが多いのだけれど、この格好ならこっちの方がいいだろう。

 なんとか準備を終えたところで時計を確認すると、まだ約束の時間よりも三十分も余裕があった。わりと遅めの時間に設定したのもあったのだが、私はこの格好がなんだか落ち着かず、とりあえず五十三階に足を運ぶことにした。

 同じ社内なのに、なんだか落ち着かない。私を乗せたエレベーターは時間もあってか、ほぼ止まることなく昇っていく。

 それと同時に心拍数も上昇し、ふわふわと浮いているような感覚に陥る。エレベーターから見える夜景さえ目に入らない。

 エレベーターが開くと、そこには落ち着いた雰囲気の待ち合いスペースがあった。大きなシャンデリアは真珠のネックレスを幾重にもかかっているようで、こぼれそうに眩い光を放っている。

 真ん中には季節の花が飾られ、それを囲うようにゆったりとソファが並んでいた。談笑を楽しんだり、誰かを待っていたり、休憩したり。

 各々目的は様々ではあるが、浮いていると思った自分格好は、ここに滞在している紳士淑女を見ると、そうでもないみたいで少し安堵した。
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