エリート御曹司とお見合い恋愛!?
なんだか不思議だ。つい先月まで、私とは無縁の世界に住んでいると思っていた倉木さんとこうして一緒に食事をして、デートというものをしているのだから。
けれど、数か月後には、上手くいけば、私の前には倉木さんではない別の誰かがいて、倉木さんだって、私ではない誰かと――。
「倉木さんは、どうして本気のお付き合いをしないんですか?」
衝動的に口から出た言葉には、今この状況に相応しくないのもいいところだった。空気が読めない、と思われても仕方がない。案の定、倉木さんは眉を曇らせた。
「その質問に答えるのは、仕事の範囲外かな」
線引きを忘れるな、と釘を刺される。その証拠に口調は優しかったけれど、声はどこか冷たかった。自然とナイフとフォークを持つ手に力が入り、なんて答えればいいのかと言葉を探す。すると倉木さんが、相変わらず冷たいままの声で続けた。
「桜田さんも興味本位でそんなこと訊くんだ。で、訊いてどうするの? 俺は自分のスタイルを変えるつもりはないよ」
どこか嫌悪感を孕んだ声色に胸が痛む。私も、と言うことは、他の女性たちにも訊かれてきたことなのだろう。私はぎゅっと唇を噛みしめ、静かに答えた。
「興味本位でいけませんか?」
まっすぐに倉木さんを見つめ返すと、倉木さんの大きな瞳がさらに見開かれた。
「だって私、今は倉木さんとお付き合いしてるから、倉木さんのことに興味があるんです。知りたいと思ったから訊いてしまいました。答えたくないならかまいませんし、嫌な思いをさせたなら謝ります。……そうですね、それにしても今の質問はたしかにルール違反でした。すみません」
最後は消え入りそうな声で一方的に告げて、私は目線を落とした。
けれど、数か月後には、上手くいけば、私の前には倉木さんではない別の誰かがいて、倉木さんだって、私ではない誰かと――。
「倉木さんは、どうして本気のお付き合いをしないんですか?」
衝動的に口から出た言葉には、今この状況に相応しくないのもいいところだった。空気が読めない、と思われても仕方がない。案の定、倉木さんは眉を曇らせた。
「その質問に答えるのは、仕事の範囲外かな」
線引きを忘れるな、と釘を刺される。その証拠に口調は優しかったけれど、声はどこか冷たかった。自然とナイフとフォークを持つ手に力が入り、なんて答えればいいのかと言葉を探す。すると倉木さんが、相変わらず冷たいままの声で続けた。
「桜田さんも興味本位でそんなこと訊くんだ。で、訊いてどうするの? 俺は自分のスタイルを変えるつもりはないよ」
どこか嫌悪感を孕んだ声色に胸が痛む。私も、と言うことは、他の女性たちにも訊かれてきたことなのだろう。私はぎゅっと唇を噛みしめ、静かに答えた。
「興味本位でいけませんか?」
まっすぐに倉木さんを見つめ返すと、倉木さんの大きな瞳がさらに見開かれた。
「だって私、今は倉木さんとお付き合いしてるから、倉木さんのことに興味があるんです。知りたいと思ったから訊いてしまいました。答えたくないならかまいませんし、嫌な思いをさせたなら謝ります。……そうですね、それにしても今の質問はたしかにルール違反でした。すみません」
最後は消え入りそうな声で一方的に告げて、私は目線を落とした。