エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「とりあえずさ、理由を聞かせてくれない? べつに桜田さん、俺のこと好きじゃないでしょ?」

 ずばっと気持ちを言い当てられ、私は動揺した。好きでもない相手に告白する、しかも遊びでいい、なんてなんとも失礼な話なのは自覚している。

 だけど、私にはこの手しか残されていないのだ。隠してもしょうがないので、私は正直に事情を話すことにした。

「……実は、両親にお見合いをするように言われまして」

 その言葉で倉木さんはすぐに納得した顔になった。

「ああ、それを断りたくて、俺に彼氏のふりをして欲しいわけ?」

「あ、いえ。そういうわけではなくてですね」

「は?」

 つまらなさそうに言われた言葉を否定すると、倉木さんは訝しげな顔になった。なんだか続けにくい雰囲気ではあるが、倉木さんのまっすぐな視線を受け、私は伏し目がちに口を開く。

「その、相手の方は、若くして会社の重役をしているすごい方らしく。両親は絶対にこの縁談を成功させろって言うんですが、なにしろ私、お付き合いというか……そもそも男性との接し方もよく分からなくて。だから」

「だから、相手に気に入られて、お見合いを成功させるために、俺と遊びでいいから付き合ってみる、と」

 言い淀んでいた続きをあっさりとまとめられ、私は静かにはい、と頷いた。しばらく沈黙が続き、顔が上げられない。

「悪いけど、断るよ」

 なんとなく予想していた言葉が返ってきて、私は胸が痛くなった。さらに普段の倉木さんからは想像もできないような 冷たい声が浴びせられる。
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