エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「俺の主な担当分野はコーポレート・ディベロップメントなんだけど」

「そう、なんですか」

 静かに返されたが、まったく理解できない単語だった。ますます自分の短絡的な思考に嫌気が差す。やっぱり彼みたいな人にお願いすることではなかった。

 そもそも最初から誰かに頼るべきことではないのだ。二十四歳にもなって、なにをやっているのか。急に冷静になり、自分のとった行動に羞恥心で顔が赤くなったときだった。

「いいよ」

 沈黙を破った言葉に私は耳を疑う。倉木さんはなにかを振り払うかのように左手で前髪をくしゃりと掻いた。

「あの……」

「そういう言い方されたら、できないから断るんですね、って感じで、仕事にプライドを持っている俺としたらノーとは言えなくなったよ。分かった、付き合おう」

「い、いいんですか?」

 確かめるように、私は離れかかった倉木さんとの距離を縮めた。

「ただし、条件がある」

 けれど、それを拒むかのように倉木さんは人差し前に突きだした。

「条件?」

「そう。これは本気でも遊びでもなく仕事で、だ。だから、付き合うのは社内……このビルの中だけ。ここから出たら、お互いのプライベートには干渉しない、どうかな?」

 今度は私が目を丸くする番だった。すっかり仕事仕様の倉木さんに、私は壊れた人形みたいにぶんぶんと首を縦に振る。
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