エリート御曹司とお見合い恋愛!?
6.本音を教えてはもらえない
 お見合いがついに来週末に迫り、私はそのための服を購入するため、渋々と新宿まで来ていた。相手の人の好みなんて知らないが、母の指示通りひざ丈のピンク色のワンピースを選ぶ。

 そこそこ値段も張り、なにが悲しくて自分のお給料で、好みではない服を買わなくてはならないのか。

 はぁ、とため息をついこぼしてしまう。その代わり、新しいブーツを買えたのでよしとしよう。駅近くの映画館でなにか観て帰ろうかな、と思い足を止めてみたが、あまりのカップル率の高さに少しだけ足踏みした。それでも公開中の映画の広告一覧を眺める。

 倉木さんは、どんな映画が好みなんだろう。

 なにげなく浮かんだ疑問を慌てて振り払う。なにを考えているのか、倉木さんとの付き合いは会社の中だけで、私たちが映画を観ることなんて絶対にない。

 なにより、私たちの付き合いはもうすぐ終わりなのだ。当たり前のことを懸命に言い聞かせながら、私の気持ちは重い鉛のように沈んでいく。

 おかげで私は映画をあきらめ、おとなしく踵を返して駅にまっすぐに向かうことにした。朝出てくるときは肌寒かったのに、太陽が昇ると、薄手のコートは少し暑いくらいだ。

 でも荷物がある以上、脱いで手で持つのも面倒くさい。私は道行く人々の格好に目を走らせる。そして、なぜか私には、幸せそうなカップルたちばかりが目についていた。

 付き合って日が浅いのか、初々しい雰囲気をまとった若い二人組。腕を組んで笑い合ってる二人。お互い無表情だけど黙ったまま手を繋いでいる二人。

 どこにいくんだろうか、どんなふうにして交際が始まったのだろうか。そんなこと知る由もないし想像もつかない。けれど、きっとみんなお互いに、好き同士なのだろう。
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