エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「み、お?」

 掠れた声で名前を呼ばれて、隣に視線をやると、倉木さんが焦点の定まらない瞳でこちらをぼんやりと見ていた。ビニールの音がガサガサと煩かったのかもしれない。とりあえず腰を落として倉木さんと視線を合わせた。

「宮川さんから連絡をもらったんです。気分はいかがですか? とりあえず、お薬飲めますか?」

 私の矢継ぎ早の質問に答えることなく、倉木さんは顔に手を当てたまま、ゆっくりと上半身を起こした。その体は力なく、やはり辛そうだ。

「いくら連絡があったからって、のこのことこんなところに来ちゃ駄目だろ」

 そんな倉木さんの口から飛び出した言葉に、私は自分の立ち位置が分かっていなかったことに恥ずかしくなった。自分から倉木さんとの付き合いを終わらせて、しかもあんな失礼な態度をとったというのに。

 倉木さんの言う通り、連絡があったからって来るべきではなかったのだ。倉木さんだって私にはもう会いたくなかったのかもしれない。

「すみません」

 調子が悪いのに、これ以上倉木さんを不快にさせるのもしのびない。けれど、このまま倉木さんをひとりにしておくのも心配だった。

「あの、私帰ります。でも、なにかあっても大変ですしどうか他の人を呼んでください。電話するのが辛いなら、代わりに呼びますから」

 こんなときに倉木さんのために駆けつけてくれる女性はきっと私だけではない。倉木さんが望んでいる人が他にいるなら――
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