苦い蜂蜜
「ひとつ、聞いていい?」

ーうん、どうした?

まひろはゆっくり腕を解放して私に向き合った。

「どうして、闇医者なの、??」

それはね、、って、いつもみたいに明るく答えてくれると思った。なのに、まひろは一瞬うつむいた後私の質問を無視してさっき開けた窓を閉じた。

ーもう、朝だぁーっ。仕事終わり終わり。
帰ろっか、伽耶!

「あ、うん。」

きっと、私には答えられない理由があるんだ。
きっと、それはもうこれ以上まひろの中に突っ込むなっていう、サインで私はそれ以上突っ込める勇気もなかった。

帰り道、まひろは道端に咲いてるレンゲを指差して蜂蜜のうんちくを突然言い出した。

ーれんげとかさ、サクラの蜂蜜ってあるじゃん?でも、それって本当にそうとは限らないんだよ。群れの中にも天邪鬼がいてさ、そういうやつは群れから離れて違う花の蜜を吸ってくるわけよ。だから完全100%の蜂蜜ってむずいんだってさぁー。

「天邪鬼、かぁ笑じゃあその天邪鬼がまずい蜜持ってきたらまずくなるってこと?」

ーザッツライト!笑 伽耶みたいな天邪鬼ー。

「まひろのバカ!」

まひろが意地悪っぽく笑う。その横顔を眺めていたかった。あの暗い地下街にいた時のまひろの顔とは全く違うと感じたのは気のせいだろうか。

ー伽耶、家まで競争しよう。

突然走り出したまひろの背中を必死で私は追いかけた。
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