苦い蜂蜜
まひろが言ってた高収入のバイトってこれか。

真山さんの研究室のお手伝いだった。まひろがすればいいのに、って言ったらまひろはいいから行けっていう。確かに仕事内容と頂ける給料は今までの仕事以上に満足できるものだった。

「伽耶ちゃんこれからよろしくね。」

真山さんの優しい笑顔に、こっちも緊張がほどけた。真山さんからはほんといい人オーラを凄く感じる。私をいじめから必死に救おうとしてくれた先生によく似てる。だからかもしれない…真山さんの前では不思議と自然体でいられるのが。

真山さんと仕事から帰ってくると、もうまひろはまたあの部屋へむかっていた。
もう来るな、とまではいわれていないけれど私はどうしても行けずにいた。

早く帰ってきてって、ここで願うだけ。

部屋に戻るとわたしの日記が机に置かれていた。

返してくれたんだ。

気がつくとわたしはまたその手帳を抱き締めていた。深く深呼吸をして、すぅーっと私の世界に入り込む。

生まれる世界を間違えたみたい。

日記の一行目はそれだった。
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