苦い蜂蜜
伽耶の心の中にも分厚い壁があってそれで必死に周りを取り繕ってる。
俺より作り笑いが上手だった。
伽耶が、看護師だったことを知って、忙しい俺の仕事を手伝ってくれたらって思った。
でも、そんなこと言ったりはしないよ。伽耶が智の下でやりがいのある仕事見つけて、伸び伸び生きてくれたらいいんだ。
俺の代わりに。
智に出会ったのは中学の時だった。
たしか、塾帰りの智がカツアゲされててそれを助けてやったのがきっかけだった。
医者の息子の智はその帰り俺を引き止めて、
ー友達になってくれないか、
そう言った。
ー無理だよ。住む世界が違うんだよ。
そう答えたら智は小さく笑った。
ーみんなそう言うんだよな。俺は望んでこうなったわけじゃないのに。
気づいたら帰ろうとした智の腕を掴んでいた。
ーなるよ、お前のダチに。
智は涙ぐんで頷いた。ー気持ち悪いよお前。なんて言って俺も初めて友達を作った。