苦い蜂蜜
その日まひろと口をきかなかった。
というか、一階に降りるとまたどこかへまひろは出かけていた。

ーなんなの、ほんとに。

むしゃくしゃした思いで胸がいっぱいになった。なんで、中途半端な返事しちゃったんだろう、私。

ー俺が手伝ってって言ったら来てくれた?

そのことばが何度も頭の中で再生された。そんな、行くに決まってるじゃん、とも言えなかった、私は馬鹿だ。

夜になって、みんな帰ってきてまず真山さんに今日休んだことを謝った。
真山さんは良いんだよって笑って私の頭を撫でる。どうして、真山さんがこんなに優しいのか分からなかった。

真山さんにまひろと喧嘩したことを言ったら真山さんは笑って大丈夫だよ、忘れてるから、って言った。

それでも私は心配だった。

まひろに嫌われないかって。

明日の朝、おはようって言われなかったらって。

一日中まひろのことばっかなのに。

その日の夜中、私は家を飛び出した。

雨が降ってきた。

それでも、私はどうしてもまひろと仲直りがしたかった。
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