苦い蜂蜜
まひろは黙ったまま私に近づいた。
まひろの手がそっと私の頰に優しく触れた。

その時、ドアの向こうから足音がした。

ダメだ。ちいさくまひろは私の耳元で呟いて、私の手を引いて奥の窮屈な押入れの中に入った。

足音と同時に今度は怒鳴り声が聞こえてくる。

ドクターいつになったら作ってくれるのかな?
おめー命ねぇぞこの野郎。
これ以上顔出さねえのならこっちも上等じゃ、の声と同時にドアがぶっ壊されて開いた。

こないで。私は震えていた。まひろが必死に私を抱きしめた。
大丈夫だよ。私も信じるしかなかった。

ここのドアを開けたものの押入れを開けてはこなかった。

その人が出て行ってしばらくしてから私とまひろは押入れを出た。

「あの人たちはなんでまひろのところにきたの?」

しばらく黙ってからまひろは口を開いた。

ー薬だよ。非合法的な薬を作れって、この前強制的に契約をむすばされたんだけど、俺もさ捕まるようなことはしたくないから、。ここ最近ずっと来るんだよ。そろそろ引っ越ししなきゃなー。

「何呑気なことをいってるの??てか毎日こんなこわい思いしてるの?どうして、私に言ってくれなかったの!!!」

なぜか私の方が涙が溢れてきて止まらなかった。なんで泣いてるんだよ、って言ってまひろはそっと抱きしめてくれた。

ここで私が辞めろって言ってもそんな事まひろが言う通りにしないことくらい分かってる。ならせめて、私もここで働きたい。
背負う恐怖も半分にしようよ。

「まひろ、私もここで」

ーそれはダメだよ。絶対ダメ。

言い終わってもいないのに、頑なにまひろは拒んだ。

ー俺は大丈夫だから。

説得力のない言葉。いつ死んじゃうか分かんないじゃん。どうして、、

「ならせめて、もう少しこのままでいてよ。」

さっきの私の告白なんて忘れてくれたっていい。今、一緒にいてくれるならそれでいい。

ー伽耶、今日はもう帰ろう。

かえる準備をして、まひろは一本の傘を持ってきた。まひろが何も言わずに私の手を握った。


まひろは私の全てを知ってる。

まひろは私の過去を知ってる。
なのに、私の友達になってくれた。
私の人生を変えてくれた。

ありがと。まひろ。


そう伝わればいいのにな、この手からまひろのもとに。

帰ってきた頃には雨は止んでいた。

音を出さないように2人で入ったのに、真山さんに気付かれていた。

ーお前ら一緒にいたのかよ笑伽耶ちゃん逃げたのかと思った。

「そんな訳ないじゃないですか笑」

なぁ智、話がある。そういってまひろは真山さんに外に出るように言った。

私は部屋に戻って少しベッドに潜った。
今日の布団はあたたかくて気持ちよかった。



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