おとぎ



初めて見た秀ちゃんの涙。

転んだって、怒られたって、

何があったって泣かなかった

秀ちゃんの涙を、こんなところで

見る事になるとは、思ってもいなかった。


私は病院のトイレに駆け込んだ。

「ひっどい顔・・・」

なんで泣いてるんだよ。

せっかくメイクしてきたのに。

目ぇ、黒いよ。


ちょっとポジティブになろう。

今日の出来事は、ある意味喜んでも

いいのかもしれない。

あんな状態だった秀ちゃんが喋ったんだ。

喋った事は、あんな悲しい事だったけど、

確かに喋ったんだ。


一歩前進だね。




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