おとぎ





次の日、また病院に行った。


「秀ちゃん。」

「・・あ・・ず。」

秀ちゃんが、私の名前を呼んでくれた!

もう二度と聞けないかと思った。

よかった。よかったよ。


「世間は酷いもんだ。
 俺は好きでバイクをやってた
 だけなのに。
 “英雄だ”ーとか勝手に持ち上げといて
 こんなんなったら突き落とす。
 見たか?この雑誌。」

外国のスポーツ誌を見せる。


「そんなの読めないよ。」

「ははっ、そだったな。」


笑った。

笑ったけど、何か違う。





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