おとぎ
「やめてよ。
そんな風に笑わないでよ。
心のない笑顔は・・・
誰かを傷つけるんでしょ?」
「お前に・・・
俺の気持ちがわかんのかよ。
もう帰ってくれ。
来てくれてありがと。」
私がすぐ振り返ったのは、
彼の目に涙が浮かんでいる事に
気がついたから。
泣くまいと、必死に耐えて笑う
あの表情が、痛々しくて・・・
見ていられなかった。
ったく・・嘘つくの下手なんだから。
強がってんのバレバレなんだよ。
私は、病室をでてすぐの、ドアの前に
しゃがみこんだ。
「“心のない笑顔は
誰かを傷つける”か・・・
そんなの覚えてくれてたんだ。」
秀ちゃんの声が聞こえた。
皮肉にも、その言葉が少し嬉しくも感じた。