おとなりさんは後輩くん。
「湊斗でいいですよ。なんで、陽向さんが俺のとこにいるかっていうと…」
このあとの湊斗からの話もそこそこ情けないものだった。
酔い潰れている私をなんとか部屋の前まで連れてきたのは良かったのだが、私に指示されて黒いリュックの中を流すものの鍵が見当たらず、仕方なく湊斗の部屋に入れることにしたという。
「そうだったんだ…」
この状況が腑に落ちた私は心を撫で下ろす。
と同時に、私は改めて、視線を下ろしたその私の瞳に映る白のだぼだぼのカラーシャツに少し頬を染める。
「まって…このシャツって…」
「あ、すみません…俺が着替えさせました…陽向さん吐いちゃって…。っても、大丈夫です、何も見てません!目隠し…ちゃんとしました」
そういって、湊斗も申し訳ないと言うように視線を下に落とし、耳まで赤くした。
その反応に可愛いと思う反面、そこまで、会ったばかりのしかも、後輩の湊斗にさせてしまったと思うだけでもう頭が上がらない。
「…」
「…」
二人の間に沈黙の時間が流れた。それを破ったのは私で、とにかくこの部屋から、湊斗のいるこの部屋から逃げたかった。
「えと…とにかくごめん。ありがとう!このシャツは洗って返すから!じゃあ、また!」
ソファーの近くにリュックと洗濯、乾燥までされ、綺麗に畳まれていた洋服を勢いよく手に取り、湊斗の部屋の玄関から外に出た。