無表情殺人事件
「その後に、なにか?」
どうも歯切れの悪い小暮に、冴木は急かすよ
うに言った。
「それがですね、我々が2人の警察官を残し
その場を1時間ほど離れたのですが、現場に戻
ると、あったはずの遺体が忽然と姿を消してし
まったんです」
あまりに突拍子もない話であったため、冴木
は思わず聞き返した。
「遺体が、なくなった?」
「はい、それも音もなく、1つしか出口のな
い部屋の外に待機した警察官に気づかれること
もなく、です」
「それは…おかしいですね」
さすがの冴木もわけがわからず困惑していると、さらに小暮が状況を説明してきた。