【完】君しか見えない
◇ 第1章 ◇
L 再会
「髪よし、服よし」
私、大園十羽(おおぞの とわ)は、髪や服に触れながら声に出して確認作業を行う。
身だしなみは大丈夫そうだ。
最後に、白いマフラーに埋もれていた頬に手を当てる。
「笑える、かな……ううん、笑え、十羽っ」
自分で自分を鼓舞しなきゃ、やってられない。
こんなに緊張するのは当たり前。
なんといったって、初恋の相手に再会するかもしれないんだから。
──昨日12月24日、中学の頃まで住んでいたこの街に戻ってきた。
初恋の男の子に会うために。
初恋の相手とは、三好 楓(みよし かえで)くん。
楓くんとは幼稚園、小学校、中学校が同じ。
いわゆる幼なじみってやつ。
どこに行くにも一緒、なにをするにも一緒。
いつでも隣にいて、すべての感情を楓くんと共有していた。
笑顔も、涙も、寒い日のあんまんも、暑い日のアイスも、
ひとつのものをふたつに。
いつだって楓くんが私に半分をくれた。
私たちはどんな幼なじみよりも仲が良かったと、自負してる。
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