【完】君しか見えない
……自分のしていることは正しいのか、わからなくなってきた。
私は、楓くんに伝えたいことがあって再会することを選んだ。
でも、私の行動が結果的に楓くんを苦しめていたとしたら……。
考えれば考えるほど、いたたまれなくなって。
どんな顔を楓くんに向ければいいかわからない。
「ごめん。 今日はもう、帰るね……」
振り絞って出した弱々しい声は、やっとのことで楓くんに届くというくらいのボリュームで。
心の中が罪悪感と混乱とで、ぐちゃぐちゃだった。
私は楓くんの顔を見ないまま立ち上がると、彼の横をすり抜けバス待合所を駆けでる。
だけど、その時だった。
「──行かせない」
背後からぐっと腕を掴まれて。