【完】君しか見えない
そして強い力で腕を引かれ、私の体は後ろから覆い被さるように抱きしめられた。
強く、揺るぎないその力に抱きすくめられ、私は抵抗することも忘れていた。
「楓……くん……?」
楓くんが、私の首元に顔を埋める。
「……あそこに毎日行ってたのは、十羽のせいじゃねぇよ」
耳元で囁かれる掠れた声は、たしかに心の奥まで響いてきて。
ぎゅっと、私を抱きしめる腕に一層力が込められた。
「俺が会いたかったから、おまえに」
「え……?」
もしも、この言葉が現実だとしたら、私は──。
「次の日だけじゃなくて、その先も毎日。
嘘ついてまで、会いたかった」