【完】君しか見えない
◇ 第2章 ◇
L 宝物
『かえでちゃん、宝物ってしってる?』
『たからもの?』
『ママにおしえてもらったんだけどね、宝物って、なくなっちゃったら一番かなしくて、一番だいすきなもののことなんだって』
『へぇ〜』
『だからね、かえでちゃんは、とわの宝物!』
俺の一番古い記憶は、そう言ってニコニコ笑う十羽の笑顔。
こちらもつられてしまいそうになる笑顔を見ながら、それなら自分にとっての宝物は十羽だと思った。
あの頃から、なにひとつ気持ちは変わらない。
世界で一番大切な君が、だれより幸せになってほしいと思ってた。
たったひとりの幼なじみのことが、
ずっと好きだった──。