【完】君しか見えない
『……ふっ』
俺の返事に、突然女の子が吹き出した。
このシチュエーションにはそぐわない、不気味でちぐはぐなその反応。
俺は目を瞬かせ、思わずたじろいだ。
あまりにも、その笑い方が悪意に満ちていたから。
『ははっ、笑える。
楓くん、ほんとに知らないんだね』
『知らないって、なにを?』
訊きながら、なぜだかわからないけど胸騒ぎがした。
なにか、すごく重大なことを知らされる気がする。
間も無く女の子が口を開き、その嫌な予感は的中してしまった。
『大園、クラスでいじめられてるよ』