【完】君しか見えない
『……え?』
頭を、背後から鈍器で殴られたような衝撃。
十羽が……なんだって……?
『楓くんが、あの子のこと好きだから。
私が言うのもなんだけど、女子の僻みってすごいんだよ?』
『俺のせいで……?』
自分で言っておいて、吐き気がしてくる。
理解しようとしても、すぐ簡単に理解できるような話じゃない。
『そっ。楓くんのことを好きな女子からしてみたら、目障りなんだよあの子』
『……っ』
あまりに軽く言ってのける彼女。
締めつけられていた喉がやっと開いて、俺は思わず声を張り上げていた。
足が踏み出した瞬間、鉄製の踊り場が軋む音を上げる。
『いじめなんて、そんなのっ……』
『──じゃあ、あの子への気持ち諦めてよ』