【完】君しか見えない


『え?』



俺の声をピシャリと遮るように告げられた言葉に、一瞬にして頭の中が真っ白になった。



そんな俺とは対照的に、彼女はニコニコと意地の悪い笑顔を浮かべる。



『それなら、いじめをやめるように、みんなに言ってあげてもいいよ。
楓くんの愛情を独り占めすることがなくなれば、いじめる意味もなくなるし。
実際いじめのことだって気づいてなかったわけだし、クラス違うんだから、守りきれないでしょ?』



『……っ』



『交換条件よ、交換条件。
楓くんがあの子への気持ちを断ち切って、みんなの楓くんになればいいの。
どう?』



ぐいぐいと胸を圧迫してくるような、押しの強い物言い。



答えは、ひとつしかなかった。



『……わかった』

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