【完】君しか見えない
《校門で待ってる》
放課後。
十羽のクラスの移動教室のタイミングを見計らって、十羽の机にこっそりと置き手紙を残し、俺は校門で待った。
能天気に毎日十羽の教室を訪ねていた自分を、今は心から恨めしく思う。
あの度に、教室中から刺さる痛い視線に耐えていたなんて。
校門に寄りかかり、自己嫌悪にぎゅっと拳を握りしめた、その時だった。
『──楓』
不意に名前を呼ばれ、その声に聞き覚えがあって、俺は顔を上げた。
『千隼くん……』
どこから見ても隙のない優等生──十羽の弟の千隼くんが、中学校からの帰りだろうか、目の前に立っていた。