【完】君しか見えない
『え……? どうしたの、急に……』
『いつか、言おうと思ってたんだ』
嘘だよ、ごめん。
『ほら、いつまでも仲良しこよしってわけにもいかないし』
ずっと一緒にいたい。
『今までが近すぎたんだよ、俺ら。
ただの幼なじみなのに。
だからさ、これからは距離を置いていこう』
でも、守りたい。
『楓くん……』
ねぇ、十羽。
そんなに悲しい顔しないで。
十羽には、笑っていてほしいんだよ。
『……楓くんが、それを望むなら……』
うつむき発せられる声が、掠れていた。
十羽のことだから、そう言うと思ってた。
いつだって俺の意思を尊重しようとしてくれる、十羽だから。