【完】君しか見えない
『楓くん、久しぶりっ! 驚いた?
楓くんに会いにきたんだよ』
あの笑顔。
なにひとつ変わらない、愛しい幼なじみ。
信じられなくて、でもたしかにそこに十羽はいて俺に笑いかけていて。
危うく、抱きしめかけた。
どさくさに紛れて、抱きしめたかった。
でも、そう思ったのも束の間、再会の時間を引き裂くようにメッセージアプリの着信音が鳴った。
ディスプレイに視線を走らせれば、待ち受け画面に通知が表示されていた。
《もうそろそろ来れそう?
家で待ってるから、早く来て♡》