【完】君しか見えない
──メッセージは、遊ぶ約束をしていた女からだった。
一瞬にして、現実を思いだす。
なに浮かれてんだろ。
俺は汚れてしまったっていうのに。
純粋な十羽の白さを、真っ黒に染めてしまうほど。
『あんたのせいで、あいつは傷ついてる。
苦しめられてる。
あんたが十羽を不幸にしてるんだ』
あの日の千隼くんの声が、すぐ近くから聞こえた気がした。
そうだ。
俺には、十羽を幸せにすることも、その権利もない───。
だから、無力な俺には、
『俺はもう十羽が知ってる楓じゃねぇから』
そんな冷たい言葉で、突き放すことしかできなくて。