【完】君しか見えない
──バスケの練習試合を十羽が見に来た時だって、そうだった。
十羽にきつく当たって、その場をやり過ごすことしかできなくて。
十羽を帰らせた後、ロッカールームに戻ると、そこでは黒瀬が待ち伏せていた。
『三好、どこ行ってたんだよ。
また難しい顔してんぞ』
『そんなことないでしょ。
見ての通り、絶好調な三好楓ですけど?
黒瀬の目がどうかしてるんじゃねーの?』
ヘッと笑うと、黒瀬はロッカーに片腕をつき、隣に立つ俺の顔を覗き込んできた。
似合わない、真面目なツラで。
『そんなことある。
十羽ちゃんのことで、なんかあったろ。
勝利の立役者が、試合終わった途端にすごい勢いでいなくなって、こっちは大騒ぎだったんだからな。
三好がそこまで本気になるのは、十羽ちゃんのことに決まってる』
だから、十羽ちゃんって呼ぶなっつーの。