【完】君しか見えない
「いーよ、無理してわかろうとしないで。
俺がわからせてやるから」
「え?」
「もう我慢とか遠慮とかやめる。
本気で行くから。
俺をこんなに振り回した責任、ちゃんと取れよな」
「へ……?」
尚もぽかんとする十羽を見て、思わず吹きだし、笑みがこぼれた。
「ふはっ、ほんとおまえってスーパー鈍感ばか」
するとそんな俺を見て、十羽が目を丸くし、キラキラと瞳を輝かせた。
「あっ、楓くんが笑った……!」
それだけでそんなに嬉しそうにするから、俺はまたくしゃっと顔を崩して笑ってしまった。
やっと、あの頃の笑い方を思い出せた気がした。
小さい頃からずっと。
やっぱり俺は、おまえしか見えない。