【完】君しか見えない
『もう我慢とか遠慮とかやめる。
本気で行くから』
なにかが吹っ切れたように、清々しい表情で楓くんにそう宣言されて1日。
「はい、あがりー」
「えっ、もう?」
「うん、もう」
楓くんの家で、私たちはババ抜きをしていた。
昨日の別れ際、楓くんに『暇なら俺の相手して』と誘われ、何事かと思ったら遊ぶ相手になってほしかったらしい。
「また負けた……。楓くん強すぎる!」
「おまえが弱いんじゃないの」
へッと嘲笑する楓くん。
勝者の余裕な笑みだ。