【完】君しか見えない
「やっぱり諦めきれない。もう一回!」
テーブルの上に散らばったトランプをかき集め、シャッフルをする。
「どーせ、いくらやっても俺には敵わねーだろうけどな」
楓くんの言葉は、やっぱり的中してしまう。
意気込んで再戦を申し込んだものの……
「はい、俺の勝ち」
あっという間に対になったトランプが、テーブルの上にパサッと放り投げられる。
「えー、なんで勝てないのー」
行き場を失い手元に残ったジョーカーを見つめ、がっくり肩を落とす。
もう何度見ただろう、この一枚取り残された悲しいジョーカーの姿を。