【完】君しか見えない
「どれ見る?」
「んー、迷っちゃうなぁ」
今日のために借りてきてくれたのかななんて、胸を弾ませながら、私は一枚のDVDを手に取った。
「これがいい」
「げ、よりによってそれかよ」
私が選んだDVDを見て、楓くんが顔をしかめる。
それもそうだ。
だって私がセレクトしたのは、少女漫画が原作のラブストーリーなのだから。
ずっと気になってた映画だけど、さすがに楓くんには退屈か。
「あ、やっぱり、こっちのSFにしようかな」
「ま、いーよ、さっきので。
十羽と見ようと思って借りてきたんだし」
そう言って、楓くんがラブストーリーのDVDを手に取る。
「へへ、ありがとう。
太っ腹だねぇ、楓くん」
「今更」