【完】君しか見えない
楓くんがDVDをプレイヤーにセットしている間に、私はテレビの前のソファーに移動する。
すると、リモコンを手にした楓くんが、当たり前のように私の隣に座った。
ふわっと甘い香りが、鼻孔をくすぐる。
肩と肩とが触れるその距離に、思わず胸がざわめく。
ち、近い……っ。
動揺しているうちに、DVDが再生された。
楓くんとの距離に緊張してしまって、最初はまったく映画の内容が頭に入ってこなかったものの、集中集中と念じていると、やがて映画を見られるようになった。
映画は、地味な女の子のシンデレラストーリー。
校内イチのイケメンの同級生・リオくんが、主人公の女の子を可愛く変身させてしまうお話だ。
キュンキュンしてしまうシーンばかりで、心臓がもたない。
「きゃーっ」と思わず黄色い悲鳴をあげてしまうような箇所も、何度もあって。