【完】君しか見えない
「はぁ、良かったぁ〜」
可愛らしい主題歌に乗せてエンドロールが流れる頃には、私の胸はピンク色に染まっていた。
楓くんがソファーに寄りかかりながら、やっぱりラブストーリーは退屈だったのか、冷めた声でつぶやく。
「ふーん、ああいうのがいいわけ」
「ああいうのがいいんだよ、楓くん。
もうドキドキしまくり!
壁ドンの時、リオくんかっこよすぎたー」
壁ドンシーンを頭の中で再生しながら、頬に手を当て、思わず恍惚の声を漏らすと。
「へー」
そんな声が聞こえてきた次の瞬間──突然手首を掴まれていた。
理解する間もなく、バタッとそのままソファーの上に押し倒されていて。
スプリングが軋んだ音が響き、柔らかいソファーが私の背中を受け止める。