【完】君しか見えない
でも、だって……。
ソファーの上で正座をしていた私は、ぎゅっと膝の上で拳を握りしめる。
「学校ないのに、いいの?
せっかく冬休みなのに……」
おずおず尋ねると、楓くんがふっと目元を緩めた。
「言ったじゃん、俺が毎日会いたいんだって」
「……っ」
まっすぐすぎる言葉に、ぎゅっと胸が締めつけられて声を失う。
こうやって、後ろめたさも不安も、すべて一瞬で払拭してしまうんだ。
「十羽」
楓くんは戸惑う私の瞳をしっかり捉え直し、また口を開いた。
柔く微笑んで。
そうして、世界で一番優しい言葉を紡いだ。
「俺の宝物はおまえだよ」