【完】君しか見えない




14時45分。


空では太陽が存在感を放ち、降り注ぐ日差しが暖かい。



これからデートだなんて、あまりにも実感がわかないけど、いい天気で良かったと思ってしまう自分もいたりして。



──楓くんと明るいうちに会うということは、あまりなかった。



思い返してみると、明るいうちに会ったのは、再会した日と、高校を訪ねようとした日くらいだ。



大抵が、暗くなってから会っている。



それにしても……改まってデートだなんて、ドキドキしちゃうなぁ。



長椅子に座っていたけど、そわそわして居ても立っても居られず、待合所の外に出て楓くんを待つ。



楓くんにとっては、デートなんて日常茶飯事だったりして。



なんで急にデートだなんて言い出したのかわからないけど、私だけが浮かれてたらどうしよう。



楽しみと不安。

両極端な気持ちに揺れ、青空を見上げていると。



「はい、かーくほ」



不意に背後から鎖骨あたりに手が回され、ぐっと引き寄せられた。

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