【完】君しか見えない
薄暗くなってきた空の下、ミルクティー色の髪が風に揺れる。
そしてそのまわりには、同じ風にたなびく茶色や黒の髪。
「あははっ、もう楓ってばー」
キャッキャとピンク色に染まった、女の子の声があたりに響く。
離れている間に楓くんは、驚くほどにプレイボーイへと変貌していた。
今も楓くんを挟むようにして、女子が3人歩いている。
みんな、楓くんの腕に絡みついたり背中に触っていたりと、ボディータッチがやたらと多い。
その光景を木の陰から見つめる、私。
私の姿が見えた人には、イケメンを睨むストーカーとでも思われそうなこのシチュエーション。
実際は楓くんが学校で冬季講習だという情報を仕入れ、帰ってくるところを待ち伏せしていたのだけれど、まさかこんな現場に遭遇してしまうとは。