【完】君しか見えない
いたずらっ子みたいに笑うと、楓くんがなぜか両手を広げた。
「十羽、おいで」
「え?うん」
立ち上がり、言われたとおり楓くんの元へ歩み寄ると。
「わっ……」
突然楓くんが私の体をひょいと抱き上げて、教卓に座らせる。
私の方が目の高さが高くなり、楓くんが見上げるようにして口を開く。
「めちゃくちゃ抱きしめていい?」
「どうぞ」
少し照れながらも準備万端であることを伝えるようにGOサインを出すと、不意に楓くんが私を抱きしめた。
「あー、会いたかった」
「……っ」
つぶやかれたまっすぐな言葉に、胸が高鳴り、頬に熱が昇る。