【完】君しか見えない
私は唇を離し、俯いた。
「……ごめん。
楓くんが愛おしすぎて、つい……」
我慢、できませんでした。
顔の火照りを自覚しながら正直に白状すると、なぜか楓くんが寄りかかるように私の肩に額を乗せた。
楓くんが吐きだしたため息が、首筋を撫でる。
「ほんと、おまえってムカつくくらい的確に俺のスイッチ押してくよね。
そーゆーの、反則だってわかってんの?」
「え?」
訊き返すと、顔を上げた楓くんと目が合う。
熱を帯びた瞳が私を見つめていた。
「早く帰ろ。今すぐにでもキスしたい」
楓くんのすべてに吸い込まれて、虜になって。
「うん」
その瞳の熱に、私は浮かされる。