【完】君しか見えない
──ガチャン。
楓くんが後ろ手でドアを閉める音が、玄関に響く。
楓くんの家に着いた途端、キスが落ちてきた。
よろけそうになって楓くんの腕を握ると、腰に手を回って支えられる。
玄関から上がることも忘れて、唇を重ね合う。
「十羽」
「ん……」
「超可愛い」
ふっと妖しく微笑んだかと思うと、再びキスが落ちてくる。
……でも、そろそろ限界……。
「口、開けて」
蕩けるような声で囁かれ、ドクンと心臓が揺れた時。
突然、静かな部屋にバイブ音が鳴り響いた。