【完】君しか見えない




──ガチャン。



楓くんが後ろ手でドアを閉める音が、玄関に響く。



楓くんの家に着いた途端、キスが落ちてきた。



よろけそうになって楓くんの腕を握ると、腰に手を回って支えられる。



玄関から上がることも忘れて、唇を重ね合う。



「十羽」



「ん……」



「超可愛い」



ふっと妖しく微笑んだかと思うと、再びキスが落ちてくる。



……でも、そろそろ限界……。



「口、開けて」



蕩けるような声で囁かれ、ドクンと心臓が揺れた時。


突然、静かな部屋にバイブ音が鳴り響いた。

< 255 / 360 >

この作品をシェア

pagetop