【完】君しか見えない
「……へっ」
完全なる不意打ちだ。
なんの心構えもしてなかったせいで固まる私に向かって、腰を折って私を見上げる楓くんは、いたずらっ子みたいに笑った。
「隙あり」
「楓く、」
「早く上がれよ。
さっきの続きしよ」
「えっ、続き!?」
「まだまだ足んねーから。
そーだな、1分キスはマストな」
ニッと唇の端を持ち上げ笑みを残して、楓くんが家に上がる。
玄関にひとり取り残された私は、廊下を歩いていく楓くんの背中を見つめていた。
──好き。
一秒一秒、楓くんに恋する気持ちは膨らんで。
だから、何度も思うんだ。
私の持てるものすべてを使って、君を幸せにしたいって。