【完】君しか見えない
お別れをしたのか、取り巻きの中からひとり離れていく女子を目で追う。
恐らく年上の彼女は、思わず見惚れそうなほど美人で。
楓くんのタイプって、ああいうお色気のある人なのだろうか。
そんなことをぐるぐると考えていた、その時。
「──こんなとこで、なにしてんだよ」
背後から突然ぶつけられた声。
この声……っ。
バッと振り向くと、そこには不機嫌さを隠そうともしない表情の楓くんが立っていた。
「か、楓くん……っ!」
あれ!? さっきまで、あっちにいなかった!?
というか、これじゃあ完全に盗み見してたシチュエーションだ。
いや、実際盗み見してたんだけど……。