【完】君しか見えない


お別れをしたのか、取り巻きの中からひとり離れていく女子を目で追う。



恐らく年上の彼女は、思わず見惚れそうなほど美人で。


楓くんのタイプって、ああいうお色気のある人なのだろうか。



そんなことをぐるぐると考えていた、その時。



「──こんなとこで、なにしてんだよ」



背後から突然ぶつけられた声。



この声……っ。



バッと振り向くと、そこには不機嫌さを隠そうともしない表情の楓くんが立っていた。



「か、楓くん……っ!」



あれ!? さっきまで、あっちにいなかった!?



というか、これじゃあ完全に盗み見してたシチュエーションだ。


いや、実際盗み見してたんだけど……。

< 26 / 360 >

この作品をシェア

pagetop