【完】君しか見えない


「できないってどういうことだよ」



思わず問い詰めるような口調になる。



違う女を彼女って紹介すれば、この件はとりあえず収まる。



でも、そんなの嘘でも演技だとしてもしたくねぇんだよ。



「……」



十羽は膝の上でぎゅっと拳を握り、うつむいたまま。



なぁ、なんでなんにも言わねぇの?



「十羽は、俺が違う女を彼女だって紹介してもいいわけ?」



「……ごめん」



俺は思わず言葉を失う。



謝罪の言葉は、つまり肯定を意味していた。

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