【完】君しか見えない
ったく、なんなんだよ。
なんでだよ。
いろんな感情がないまぜで、なんかもう自棄になって。
俺は心の中で燻っていた言葉をそのまま、低いトーンでぶつけていた。
「……十羽って、ヤキモチとか全然やかねぇよな」
この前だってそう。
合コンに誘われた時、十羽は反対しなかった。
むしろ、行ってみたらなんて言っちゃって。
「それは……」
ああ、イライラする。
「悪い、もう帰るわ俺」
とりあえずこの場から離れたくて、立ち上がり、待合所から出て行こうとする。
その時。
「……楓くん……っ」
後ろから腕を掴まれ、振り返ると、十羽がすがりつくように俺を見ていた。