【完】君しか見えない
「会わない間に覗き魔になってたとはな」
「ち、違うよっ!
楓くんに話しかけるタイミングを失っちゃって……」
弁解する私に、楓くんはふっと唇に笑みを乗せた。
あ……昨日の自嘲気味の笑顔……。
「まぁ、見てたなら話は早いな。
あーいうことだから」
淡々として、冷え切った語り口。
ああいうこととは、女の子と遊んでることを指しているのだと、すぐに理解する。
「今の俺見て、幻滅しただろ。
もうあの頃の俺とは、」
「──でも、楓くんは楓くんだよ」
楓くんの言葉を遮り、まっすぐに楓くんの目を見据える。
「は?」
「私のこと見つけてくれたし、無視しないでくれる。
楓くんは、楓くんが思うより優しくて綺麗だよ」
昨日だって今日だって、無視するならできたはず。
それなのに、声をかけてくれた。
今だって、女子たちと話してたのに来てくれたんだろう。
やっぱり、優しいとこ変わってない。