【完】君しか見えない


十羽がケータイを持ってないから連絡も取れず、俺は黒瀬に誘われるまま、土曜課外後にこうしてファミレスへとやって来た。



再びため息をついたところで、ドリンクバーを取りに行っていた黒瀬が席に戻ってくる。



「三好が大好きないちごミルクあったから、持ってきたぞ!」



「おー、さんきゅ」



俺の前に、甘ったるいピンク色の液体をなみなみ注いだグラスが置かれる。



「まぁさ、甘いの飲んで、元気出せって」



「元気、ねぇ」



……あいつ、今なにしてんだろ。



いちごミルクを見つめても、十羽の姿は見えない。



「十羽ちゃん、なんでリリナちゃんに会えないって言ったんだろうな。
やっぱりまだ中学のこと、引きずってんのかな」



腕を組み、うーん、と考え込むように宙を睨む黒瀬。



そうだとしたら、やっぱ俺の責任。



トラウマになってるかもしれないことを強要しようのは、俺。


そんな状況にしてしまったのは、俺。

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