【完】君しか見えない


「明日、十羽ん家行ってくる」



明日は日曜だし、十羽も家にいるだろうから。



すると、コーラが入ったグラスを握りしめていた黒瀬がまじまじと俺を見つめてきた。



「でも珍しいよな、三好が感情的になるなんて。
争いごとは、のらりくらり避けてきたじゃん」



「あー、うん。
俺も、自分でもあんなに怒ったのが信じらんねーんだよね」



全体重をかけるように頬杖をつき、遠い目で昨日を振り返る。



すると、黒瀬がなんてことないってくらい自然にぽんと答えをくれた。



「そんだけ、十羽ちゃんのことが好きなんだな」



「え?」



「心に余裕がなくなるっていうのはさ、十羽ちゃんのこと本気で好きだからだろ。
いっつも余裕で完全無欠な三好が人間らしさを取り戻したみたいで、俺は嬉しい」



思わず言葉を詰まらせる俺に、ニッと白い歯を見せて笑う黒瀬。

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