【完】君しか見えない


そして、しんみりとした空気を壊すように、わざと明るい調子でメニューを開いた。



「もう8時だし、そろそろ腹減ってきたな〜。
ペコペコだよ、俺〜!
三好もなにか食おうぜ。
腹が減っては戦もできないしな!」



一貫してこういう奴だから、黒瀬の隣が心地いい。


なんて、本人にはぜってー言ってやんねぇけど。



「そーだな」



賛同し、黒瀬が開いたメニューを覗こうと動いた時、カサ……とズボンのポケットの中でなにかが音を立てた。



「ん……?」



音がした方のポケットに手を入れ、中を探る。



すると、畳まれた紙が出てきた。



すぐに、学校に十羽が来た時に、あいつが俺に渡したルーズリーフだと悟る。



後で読んでと言われ、そのままにしてたんだった。



丁寧に畳まれたルーズリーフを開いてみる。



するとそこには、見慣れた十羽の字が並んでいた。

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